工場やプラントの計装で広く使われている「4–20mA」。圧力や温度などの測定値を、電流の大きさで伝えるアナログ信号です。古くからある方式ですが、今でも現役で使われ続けています。
この記事では、4–20mAの仕組みをQ&A形式で整理します。
Q1. 4–20mAとは、どういう信号か?
A. 測定範囲の下限を4mA、上限を20mAに対応させて、その間の電流で値を伝える方式です。
たとえば0〜100℃を測る温度伝送器なら、次のようになります。
| 温度 | 電流 |
|---|---|
| 0℃(0%) | 4mA |
| 25℃(25%) | 8mA |
| 50℃(50%) | 12mA |
| 100℃(100%) | 20mA |
変化する幅は16mAです。電流から測定値への換算は次の式になります。
測定値[%] =(電流[mA] − 4)÷ 16 × 100
Q2. なぜ電圧ではなく電流で送るのか?
A. 1本の輪になった回路では、電流はどこで測っても同じだからです。配線の抵抗や長さの影響を受けません。
電圧で送る場合の弱点
電圧信号は、送る側と受ける側のGNDの電位が同じであることを前提にしています。しかし配線が長いと、GNDの線に流れる電流で電圧降下が生じ、両端のGND電位がずれます。特に、センサの電源のGNDと信号のGNDを1本の線で共用している場合、電源電流による電圧降下がそのまま信号の誤差になります。
電流で送る場合
伝送器は「決まった大きさの電流を流す」ように働きます。配線の抵抗が増えても、伝送器がその分だけ電圧を調整して、同じ電流を流し続けます。電源電圧に余裕がある限り、受け側に届く電流は変わりません。
また、受け側は数百Ωという低い抵抗で受けます。入力インピーダンスが高い電圧入力に比べて、周囲から飛び込んでくるノイズの影響を受けにくくなります。
Q3. なぜ0mAではなく4mAから始まるのか?
A. 主な理由は2つあります。断線を検出するためと、信号線を通じて伝送器に電源を送るためです。
理由1:断線や故障を見分けられる
もし0mAを測定値の0%にすると、「測定値が0%」なのか「線が切れた」のか区別できません。4mAを0%にしておけば、0mAは明らかに異常だと分かります。このように、ゼロ点をあえて0でない値にすることを「ライブゼロ」と呼びます。
この考え方をさらに進めたのが、NAMUR NE43という推奨規格です。
| 電流 | 意味 |
|---|---|
| 3.6mA以下 | 故障 |
| 3.8〜4.0mA | 測定範囲を少し下回っている |
| 4.0〜20.0mA | 正常な測定範囲 |
| 20.0〜20.5mA | 測定範囲を少し上回っている |
| 21.0mA以上 | 故障 |
伝送器が自分の故障(センサの断線など)を検出したときに、わざと範囲外の電流を流して知らせる仕組みです。
理由2:信号線で電源も送れる
4mAは常に流れているので、伝送器はその電流の一部を自分の動作電源として使えます。信号線2本だけで、電源の供給と信号の伝送を兼ねられます。これが次の質問で説明する「2線式」です。
補足:歴史的な経緯
電気信号が普及する前、計装の信号には空気圧(3〜15psi)が使われていました。下限と上限の比が1対5で、4–20mAと同じです。この比率を引き継いだと言われています。
Q4. 2線式、3線式、4線式は何が違うのか?
A. 電源と信号を、何本の線でやり取りするかの違いです。
| 方式 | 配線 | 特徴 |
|---|---|---|
| 2線式 | 2本で電源と信号を兼ねる | 配線が最も少ない。伝送器は4mA未満の電流で動く必要がある。圧力や温度の伝送器で一般的。 |
| 3線式 | 電源、信号、共通のGND | 伝送器が4mA以上の電流を使える。 |
| 4線式 | 電源2本と信号2本が独立 | 消費電力の大きい機器向け。電源と信号を分離できる。 |
Q5. 24V電源は何のためにあるのか?
A. 回路に電流を流すための電源です。信号の大きさを表しているわけではありません。
2線式の回路では、電源の電圧を、伝送器、受信用の抵抗、配線の3つで分け合います。20mAを流したときに、すべてを足しても電源電圧に収まっている必要があります。
| 要素 | 必要な電圧(20mA時) |
|---|---|
| 伝送器の最低動作電圧(例) | 12V |
| 受信用の抵抗 250Ω | 5V |
| 配線の抵抗 往復50Ω | 1V |
| 合計 | 18V |
24V電源なら6Vの余裕があります。伝送器の最低動作電圧は機種によって違うので、データシートで確認します。この例の場合、伝送器以外に使える電圧は12Vなので、受信用の抵抗と配線を合わせて600Ωまでつなげる計算です。
受け側で実際に測る電圧は、次の質問で見るように数V程度です。4–20mAがノイズに強いのは、電圧が高いからではありません。
Q6. マイコンで受けるには、どうすればよいか?
A. 抵抗1本で電流を電圧に変換し、その電圧をADCで測ります。
+24V ----[ Transmitter ]----+----[ 1k ]----+---- ADC
| |
[ 150R ] [ C ]
| |
GND ------------------------+--------------+
伝送器から出た電流を、抵抗を通してGNDに戻します。抵抗の両端には、電流に比例した電圧が現れます。この抵抗をシャント抵抗と呼びます。
抵抗値の選び方
| 抵抗値 | 4mAのとき | 20mAのとき | 22mAのとき | 向いているADC |
|---|---|---|---|---|
| 250Ω | 1.0V | 5.0V | 5.5V | 計装用の1–5V入力 |
| 220Ω | 0.88V | 4.4V | 4.84V | 5V系のマイコン |
| 150Ω | 0.6V | 3.0V | 3.3V | 3.3V系のマイコン |
| 120Ω | 0.48V | 2.4V | 2.64V | 3.3V系(余裕を大きく取りたい場合) |
計装の世界では250Ωで1〜5Vに変換するのが標準です。しかし5V系のマイコンに250Ωを使うと、20mAでちょうど上限の5Vになり、故障を知らせる21mA以上の電流を測れません。20mAを超える範囲まで読めるように、少し小さい抵抗を選びます。
分解能はどれくらいになるか
3.3V基準の12bit ADCと150Ωの組み合わせで計算します。
- 4mA:0.6V → コードは約745
- 20mA:3.0V → コードは約3723
4〜20mAの範囲を約2980段階で読めます。1段階あたり約5.4µAで、測定範囲の約0.03%です。多くの用途では十分な細かさです。
抵抗の精度がそのまま測定の精度になる
電流を電圧に変換しているのはシャント抵抗なので、この抵抗の誤差がそのまま測定値の誤差になります。誤差0.1%で、温度係数の小さい抵抗を使います。
発熱にも注意が必要です。20mAを流したときの消費電力は、150Ωで60mW、250Ωで100mWです。定格ぎりぎりの小さな抵抗を使うと、自己発熱で抵抗値が変わります。定格電力に余裕のあるものを選びます。
プログラムでの換算
// シャント抵抗150Ω、基準電圧3.3V、12bit ADCの場合
const float VREF = 3.3;
const float SHUNT = 150.0;
float toPercent(int raw, bool *fault) {
float mA = raw * VREF / 4096.0 / SHUNT * 1000.0;
*fault = (mA < 3.6) || (mA > 21.0); // 断線や故障の判定
return (mA - 4.0) / 16.0 * 100.0; // 0〜100%に換算
}
保護回路を入れる
伝送器が故障して短絡すると、24Vがシャント抵抗に直接かかります。150Ωなら160mAが流れ、抵抗は約3.8Wを消費します。小さな抵抗はすぐに焼けてしまいますし、ADCのピンにも24Vがかかります。
- シャント抵抗とADCのピンの間に、1kΩ〜10kΩ程度の抵抗を入れて、ピンに流れ込む電流を制限します。
- ADCのピンとGNDの間にコンデンサを入れて、ノイズを減らします。先ほどの抵抗と合わせてローパスフィルタになります。
- 電流ループの電源側に、リセッタブルヒューズなどの電流制限を入れます。
GNDに注意する
上の回路は、24V電源のGNDとマイコンのGNDが共通であることが前提です。複数のループがそれぞれ別の電源で動いている場合や、GNDをつなげない場合は、差動入力のADCや絶縁アンプが必要になります。
Q7. 4–20mAの弱点は何か?
A. 1組の配線で1つの値しか送れないことです。
- 測定点が増えると、その数だけ配線が必要になります。
- 常に4〜20mAを流し続けるので、電池駆動の機器には向きません。
- 送れるのは測定値だけで、機器の型番や診断情報のような付加情報は送れません。
3つ目の弱点を補う方式としてHARTがあります。4–20mAの電流に小さな交流信号を重ねて、アナログの測定値を保ったままデジタル通信も行います。
こうした弱点があっても4–20mAが使われ続けているのは、仕組みが単純で、テスター1台で動作を確認でき、長い配線でも安定して動くからです。
まとめ
- 電流は回路のどこでも同じなので、配線の抵抗や長さの影響を受けない。
- 4mAから始めることで、断線と測定値ゼロを区別でき、信号線で電源も送れる。
- NAMUR NE43では、3.6mA以下と21mA以上を故障の合図としている。
- 24Vは電流を流すための電源で、受け側で測る電圧は数V程度。
- マイコンでは、シャント抵抗で電圧に変換して測る。3.3V系なら150Ω前後。
- シャント抵抗の精度と発熱、短絡時の保護、GNDの共通化に注意する。

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