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4–20mAはなぜ4mAから始まるのか?電流ループの仕組みとマイコンでの受け方

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工場やプラントの計装で広く使われている「4–20mA」。圧力や温度などの測定値を、電流の大きさで伝えるアナログ信号です。古くからある方式ですが、今でも現役で使われ続けています。

  • なぜ電圧ではなく電流で送るのか?
  • なぜ0mAではなく、中途半端な4mAから始まるのか?
  • 一緒に出てくる「24V」は何のための電圧なのか?
  • マイコンで受けるには、どんな回路にすればよいのか?

この記事では、4–20mAの仕組みをQ&A形式で整理します。

先に結論

  • 電流は回路のどこでも同じ大きさなので、配線が長くても値が変わりません。
  • 4mAから始めるのは、断線(0mA)と測定値のゼロを区別するためと、信号線でセンサに電源を送るためです。
  • 24Vは信号の大きさではなく、電流を流すための電源です。
  • マイコンでは、抵抗1本で電流を電圧に変換して測ります。3.3V系なら150Ω前後が使いやすい値です。

Q1. 4–20mAとは、どういう信号か?

A. 測定範囲の下限を4mA、上限を20mAに対応させて、その間の電流で値を伝える方式です。

たとえば0〜100℃を測る温度伝送器なら、次のようになります。

温度電流
0℃(0%)4mA
25℃(25%)8mA
50℃(50%)12mA
100℃(100%)20mA

変化する幅は16mAです。電流から測定値への換算は次の式になります。

測定値[%] =(電流[mA] − 4)÷ 16 × 100

Q2. なぜ電圧ではなく電流で送るのか?

A. 1本の輪になった回路では、電流はどこで測っても同じだからです。配線の抵抗や長さの影響を受けません。

電圧で送る場合の弱点

電圧信号は、送る側と受ける側のGNDの電位が同じであることを前提にしています。しかし配線が長いと、GNDの線に流れる電流で電圧降下が生じ、両端のGND電位がずれます。特に、センサの電源のGNDと信号のGNDを1本の線で共用している場合、電源電流による電圧降下がそのまま信号の誤差になります。

電流で送る場合

伝送器は「決まった大きさの電流を流す」ように働きます。配線の抵抗が増えても、伝送器がその分だけ電圧を調整して、同じ電流を流し続けます。電源電圧に余裕がある限り、受け側に届く電流は変わりません。

また、受け側は数百Ωという低い抵抗で受けます。入力インピーダンスが高い電圧入力に比べて、周囲から飛び込んでくるノイズの影響を受けにくくなります。

Q3. なぜ0mAではなく4mAから始まるのか?

A. 主な理由は2つあります。断線を検出するためと、信号線を通じて伝送器に電源を送るためです。

理由1:断線や故障を見分けられる

もし0mAを測定値の0%にすると、「測定値が0%」なのか「線が切れた」のか区別できません。4mAを0%にしておけば、0mAは明らかに異常だと分かります。このように、ゼロ点をあえて0でない値にすることを「ライブゼロ」と呼びます。

この考え方をさらに進めたのが、NAMUR NE43という推奨規格です。

電流意味
3.6mA以下故障
3.8〜4.0mA測定範囲を少し下回っている
4.0〜20.0mA正常な測定範囲
20.0〜20.5mA測定範囲を少し上回っている
21.0mA以上故障

伝送器が自分の故障(センサの断線など)を検出したときに、わざと範囲外の電流を流して知らせる仕組みです。

理由2:信号線で電源も送れる

4mAは常に流れているので、伝送器はその電流の一部を自分の動作電源として使えます。信号線2本だけで、電源の供給と信号の伝送を兼ねられます。これが次の質問で説明する「2線式」です。

補足:歴史的な経緯

電気信号が普及する前、計装の信号には空気圧(3〜15psi)が使われていました。下限と上限の比が1対5で、4–20mAと同じです。この比率を引き継いだと言われています。

Q4. 2線式、3線式、4線式は何が違うのか?

A. 電源と信号を、何本の線でやり取りするかの違いです。

方式配線特徴
2線式 2本で電源と信号を兼ねる 配線が最も少ない。伝送器は4mA未満の電流で動く必要がある。圧力や温度の伝送器で一般的。
3線式 電源、信号、共通のGND 伝送器が4mA以上の電流を使える。
4線式 電源2本と信号2本が独立 消費電力の大きい機器向け。電源と信号を分離できる。

Q5. 24V電源は何のためにあるのか?

A. 回路に電流を流すための電源です。信号の大きさを表しているわけではありません。

2線式の回路では、電源の電圧を、伝送器、受信用の抵抗、配線の3つで分け合います。20mAを流したときに、すべてを足しても電源電圧に収まっている必要があります。

要素必要な電圧(20mA時)
伝送器の最低動作電圧(例)12V
受信用の抵抗 250Ω5V
配線の抵抗 往復50Ω1V
合計18V

24V電源なら6Vの余裕があります。伝送器の最低動作電圧は機種によって違うので、データシートで確認します。この例の場合、伝送器以外に使える電圧は12Vなので、受信用の抵抗と配線を合わせて600Ωまでつなげる計算です。

受け側で実際に測る電圧は、次の質問で見るように数V程度です。4–20mAがノイズに強いのは、電圧が高いからではありません。

Q6. マイコンで受けるには、どうすればよいか?

A. 抵抗1本で電流を電圧に変換し、その電圧をADCで測ります。

+24V ----[ Transmitter ]----+----[ 1k ]----+---- ADC
                            |              |
                         [ 150R ]        [ C ]
                            |              |
GND ------------------------+--------------+

伝送器から出た電流を、抵抗を通してGNDに戻します。抵抗の両端には、電流に比例した電圧が現れます。この抵抗をシャント抵抗と呼びます。

抵抗値の選び方

抵抗値4mAのとき20mAのとき22mAのとき向いているADC
250Ω1.0V5.0V5.5V計装用の1–5V入力
220Ω0.88V4.4V4.84V5V系のマイコン
150Ω0.6V3.0V3.3V3.3V系のマイコン
120Ω0.48V2.4V2.64V3.3V系(余裕を大きく取りたい場合)

計装の世界では250Ωで1〜5Vに変換するのが標準です。しかし5V系のマイコンに250Ωを使うと、20mAでちょうど上限の5Vになり、故障を知らせる21mA以上の電流を測れません。20mAを超える範囲まで読めるように、少し小さい抵抗を選びます。

分解能はどれくらいになるか

3.3V基準の12bit ADCと150Ωの組み合わせで計算します。

  • 4mA:0.6V → コードは約745
  • 20mA:3.0V → コードは約3723

4〜20mAの範囲を約2980段階で読めます。1段階あたり約5.4µAで、測定範囲の約0.03%です。多くの用途では十分な細かさです。

抵抗の精度がそのまま測定の精度になる

電流を電圧に変換しているのはシャント抵抗なので、この抵抗の誤差がそのまま測定値の誤差になります。誤差0.1%で、温度係数の小さい抵抗を使います。

発熱にも注意が必要です。20mAを流したときの消費電力は、150Ωで60mW、250Ωで100mWです。定格ぎりぎりの小さな抵抗を使うと、自己発熱で抵抗値が変わります。定格電力に余裕のあるものを選びます。

プログラムでの換算

// シャント抵抗150Ω、基準電圧3.3V、12bit ADCの場合
const float VREF  = 3.3;
const float SHUNT = 150.0;

float toPercent(int raw, bool *fault) {
  float mA = raw * VREF / 4096.0 / SHUNT * 1000.0;
  *fault = (mA < 3.6) || (mA > 21.0);     // 断線や故障の判定
  return (mA - 4.0) / 16.0 * 100.0;        // 0〜100%に換算
}

保護回路を入れる

伝送器が故障して短絡すると、24Vがシャント抵抗に直接かかります。150Ωなら160mAが流れ、抵抗は約3.8Wを消費します。小さな抵抗はすぐに焼けてしまいますし、ADCのピンにも24Vがかかります。

  • シャント抵抗とADCのピンの間に、1kΩ〜10kΩ程度の抵抗を入れて、ピンに流れ込む電流を制限します。
  • ADCのピンとGNDの間にコンデンサを入れて、ノイズを減らします。先ほどの抵抗と合わせてローパスフィルタになります。
  • 電流ループの電源側に、リセッタブルヒューズなどの電流制限を入れます。

GNDに注意する

上の回路は、24V電源のGNDとマイコンのGNDが共通であることが前提です。複数のループがそれぞれ別の電源で動いている場合や、GNDをつなげない場合は、差動入力のADCや絶縁アンプが必要になります。

Q7. 4–20mAの弱点は何か?

A. 1組の配線で1つの値しか送れないことです。

  • 測定点が増えると、その数だけ配線が必要になります。
  • 常に4〜20mAを流し続けるので、電池駆動の機器には向きません。
  • 送れるのは測定値だけで、機器の型番や診断情報のような付加情報は送れません。

3つ目の弱点を補う方式としてHARTがあります。4–20mAの電流に小さな交流信号を重ねて、アナログの測定値を保ったままデジタル通信も行います。

こうした弱点があっても4–20mAが使われ続けているのは、仕組みが単純で、テスター1台で動作を確認でき、長い配線でも安定して動くからです。

まとめ

  • 電流は回路のどこでも同じなので、配線の抵抗や長さの影響を受けない。
  • 4mAから始めることで、断線と測定値ゼロを区別でき、信号線で電源も送れる。
  • NAMUR NE43では、3.6mA以下と21mA以上を故障の合図としている。
  • 24Vは電流を流すための電源で、受け側で測る電圧は数V程度。
  • マイコンでは、シャント抵抗で電圧に変換して測る。3.3V系なら150Ω前後。
  • シャント抵抗の精度と発熱、短絡時の保護、GNDの共通化に注意する。

参考資料

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