こんにちは、Tech Samuraiです!
先日、ドローンの飛行記録をExcelに転記するツールを**PySide6**で開発しました。PythonでGUIアプリケーションを作るとき、私たちは`Tkinter`, `PyQt`, `Kivy`, `wxPython`など、数多くの選択肢を前にします。この多様性は豊かさである一方、初心者にとっては「一体どれを選べばいいんだ?」という混乱の元にもなります。
今回の記事では、このGUIライブラリの森を整理し、**なぜ私が最近のプロジェクトでPySide6を選んでいるのか**、その理由を他の主要なライブラリと比較しながら、徹底的に解説していきます。あなたの次のGUIプロジェクトのための、最適な「刀」を選ぶ手助けになれば幸いです。
双子のライバル:PySide6 vs PyQt6
Pythonの本格的なGUI開発において、最も強力で人気のある選択肢が**PySide6**と**PyQt6**です。この2つは、実は「双子」のような関係にあります。
どちらも、**Qt(キュート)**という、C++で書かれた非常に高機能で美しいGUIフレームワークを、Pythonから使えるようにした「バインディング」ライブラリです。
例えるなら… Qtが「高性能なドイツ製の自動車エンジン」だとすれば、PySide6とPyQt6は、そのエンジンをあなたのPythonカーに搭載するための「取り付けキット」です。搭載されるエンジンは同じなので、基本的な性能や機能(ウィジェットの種類、描画能力など)は、両者で**ほぼ同一**です。コードの書き方も驚くほど似ています。
では、何が違うのでしょうか? 決定的な違いは**「ライセンス」**と**「開発元」**です。
最大の違い:ライセンス(商用利用のしやすさ)
- PyQt6:
Riverbank Computing社が開発。「GPL」と「商用ライセンス」のデュアルライセンスです。これは、「もしあなたが作ったアプリのソースコードを公開しない(クローズドソースな)商用製品として販売・配布する場合、高価な商用ライセンスを購入しなければならない」ということを意味します。 - PySide6:
Qtの開発元であるThe Qt Companyが公式に開発。「LGPL」という、より緩やかなライセンスです。こちらは、PySide6ライブラリ自体を改変しない限り、あなたが作ったアプリが**クローズドソースの商用製品であっても、ライセンス料を支払う必要なく、無料で利用できます。**
このライセンスの違いが、PySide6を選ぶ最も大きな理由です。趣味のツールならどちらでも良いかもしれませんが、将来的に仕事で使ったり、作ったアプリを販売したりする可能性が少しでもあるなら、LGPLライセンスを持つPySide6の方が圧倒的に有利で、安心です。
開発元の違い:公式か、サードパーティか
- PyQt6: サードパーティであるRiverbank Computing社が長年にわたり開発しており、非常に安定しています。
- PySide6: Qtの生みの親であるThe Qt Companyが開発・サポートする**公式**ライブラリです。公式ならではの安心感と、将来的なQtの新機能への追従スピードが期待できます。
その他の選択肢:TkinterとSimpleGUI
標準装備の選択肢:Tkinter
Pythonをインストールすれば最初から入っている、標準ライブラリです。
- 長所: 追加インストール不要ですぐに使える。ごく簡単なUIなら手軽に作れる。
- 短所: 見た目が少し古風。複雑なレイアウトや、モダンで高機能なウィジェットはPySide6/PyQt6に劣る。
「自分しか使わない、ちょっとした社内ツール」などには十分ですが、本格的なアプリケーション開発には力不足な場面も多いです。
学習のための選択肢:SimpleGUI
`SimpleGUI`や`PySimpleGUI`といったライブラリは、TkinterやQtをさらにラップし、GUIプログラミングを**教育目的で、より簡単**に書けるようにしたものです。
例えるなら… PySide6が「プロ用の工具セット」なら、SimpleGUIは「子供向けの工作キット」です。GUIの概念を学ぶ第一歩としては素晴らしいですが、本格的なアプリケーションを自由に設計・開発するには、いずれプロ用の工具セットの使い方を学ぶ必要があります。
結論:Tech SamuraiがPySide6をおすすめする理由
各ライブラリの特徴をまとめると、以下のようになります。
特徴 | PySide6 | PyQt6 | Tkinter |
---|---|---|---|
ベース | Qt 6 | Qt 6 | Tk |
機能・見た目 | 高機能・モダン | 高機能・モダン | 基本的 |
ライセンス | LGPL(商用利用しやすい) | GPL(商用利用は有償) | Python標準(問題なし) |
開発元 | 公式(The Qt Company) | サードパーティ | Python標準 |
おすすめ用途 | 商用・趣味問わず、全ての本格的なアプリ | GPLライセンスで問題ない趣味・研究開発 | 追加インストール不要の簡単なツール |
結論として、**Qtの持つ圧倒的なパワーと美しさを、ライセンスの心配なく、公式の安心感と共に利用できる**という点において、私は現代のPython GUI開発の第一選択肢として**PySide6**を強くおすすめします。
もちろん、プロジェクトの要件や制約によって最適なツールは変わりますが、これから新しく本格的なGUIアプリケーション開発を学ぶなら、PySide6から始めて間違いはないでしょう。
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