こんにちは、Tech Samuraiです!
前回の記事「ドローン飛行記録CSVをExcelに自動転記するツールを作ろう」では、`PySide6`を使って実用的なデスクトップアプリを開発しましたね。
しかし、コードを書きながら「QWidget
って何?」「QVBoxLayout`
って一体何をしてるの?」「.clicked.connect`
ってどういう仕組み?」といった疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。
今回の記事は、そんな疑問に答えるための**PySide6の基礎講座**です。GUIアプリケーションがどのような「部品」と「仕組み」で成り立っているのか、その3つの核心的な概念、**「ウィジェット」「レイアウト」「シグナル&スロット」**について、一つずつ丁寧に探検していきます。この土台を理解すれば、あなたのGUI開発能力は飛躍的に向上します!
1. アプリの「部品」- ウィジェット (Widget)
ウィジェットとは、GUIアプリケーションを構成する、目に見える**全ての「部品」**のことです。例えば、
QLabel
: テキストを表示するラベルQPushButton
: クリックできるボタンQLineEdit
: 1行のテキスト入力欄QCheckBox
: チェックボックス- そして、これら全ての土台となるウィンドウ自体も
QWidget
から作られます。
例えるなら… ウィジェットは「レゴブロック」です。様々な形や色のブロック(ウィジェット)を組み合わせることで、アプリケーションという作品を作り上げていきます。
2. 部品を「整列」させる – レイアウト (Layout)
ボタンやラベルといったウィジェットをただ配置しただけでは、ウィンドウサイズを変えたときに、レイアウトが崩れてしまいます。そこで登場するのが**レイアウトマネージャー**です。
レイアウトは、ウィジェットを自動的に整列させ、ウィンドウサイズが変更されても美しい配置を保ってくれる、目に見えない「仕切り」や「棚」のようなものです。前回のアプリでは2種類使いました。
QVBoxLayout
(Vertical Box Layout): ウィジェットを**垂直方向(縦)**に一列に並べます。QHBoxLayout
(Horizontal Box Layout): ウィジェットを**水平方向(横)**に一列に並べます。
# 垂直レイアウトを作成
main_layout = QVBoxLayout(self)
# 水平レイアウトを作成
inspection_layout = QHBoxLayout()
# 水平レイアウトに部品を追加
inspection_layout.addWidget(QLabel("..."))
inspection_layout.addWidget(self.inspection_path_edit)
# 垂直レイアウトに、水平レイアウト(部品の入った棚)を追加
main_layout.addLayout(inspection_layout)
このように、レイアウトの中にさらに別のレイアウトを入れる「入れ子構造」にすることで、複雑な画面も整然と構築することができます。
3. 部品同士を「対話」させる – シグナル & スロット (Signal & Slot)
これが、PySide6 (Qt) の最も強力で特徴的な仕組みです。ウィジェットが何かしらのアクション(例: ボタンがクリックされた)を起こしたときに、別の処理(例: ある関数を実行する)を自動的に呼び出すための仕組みです。
- シグナル (Signal): イベントの発生を知らせる「**合図**」や「警報」です。(例: `button.clicked`)
- スロット (Slot): その合図を受け取って実行される「**処理**」や「行動」です。(例: `self.run_transfer`メソッド)
そして、この2つを繋ぐのが.connect()`
メソッドです。
# execute_btn の .clicked シグナル(合図)と、
# self.run_transfer というスロット(処理)を接続(connect)する
execute_btn.clicked.connect(self.run_transfer)
この「合図と処理を繋ぐ」という考え方をマスターすれば、アプリケーション内のあらゆる対話的な動作(ボタンを押したらファイルダイアログが開く、など)を自由に実装できるようになります。
まとめ
今回は、PySide6のGUIアプリケーションを支える、3つの柱について探検しました。
- ウィジェット: ボタンやラベルといった、目に見える「部品」。
- レイアウト: ウィジェットを美しく整列させる、見えない「仕切り」。
- シグナル&スロット: ユーザーのアクションとプログラムの処理を繋ぐ「対話」の仕組み。
これらの概念を理解したことで、あなたはもはや、ただコードを模倣するだけでなく、自らの手でGUIアプリケーションを「設計」するための、強固な基礎を手に入れました。ぜひ、これらの知識を元に、あなただけのオリジナルアプリ開発に挑戦してみてください!
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